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ファザネリー城

7年ぶりにドイツのフルダ町の郊外にある、ファザネリー城を訪ねました。ここには古い中国家具やアジアの古陶磁器が収められています。西洋の古城や室内を飾る華やかな西洋家具や絵画や工芸品に目が慣れてしまったのか、見てもむやみに感動することが少なくなってしまいました。その代わり、時間を置いて改めて鑑賞しても、良いものはやはり良いなと改めて静かに感動できるものと、そうでないものとが自然と区別されるようになり始めています。

ファザネリー城には、18世紀半ばに中国から運び込まれたという黒漆の大屏風があります。以前、訪ねたときには、この大屏風の前に赤い絵の具の発色が美しい、柿右衛門風の大壺が鎮座しているのを見ました。何百年という時代も異国という空間も超えて、再度この地でアジア生まれの古い品物に対面したこと、しかも、中国家具と日本の古陶磁器という組み合わせをドイツの地で見たことに強く感動したのを覚えています。

今では、その大壺は屏風から離されて、全く別の場所にガラスケースに特別展示されていました。ケース越しに見るためか、以前に比べて何だか3回りほども小さくなってしまったような気がしました。実際に縮むはずがないのに不思議なものです。城の中の大きな居室で、中国の大屏風と一緒に時代の流れに身を任せていたときの方が、この大壺にとっては、気楽で良かったかもしれません。

大屏風の方は、西洋家具に囲まれて、以前と全く同じ場所に同じように置かれていました。部屋の調度品の中では決して主役ではなく、脇役に徹するばかりの品ですが、見ると安心します。まるで久しぶりに会う知人のような感覚で「お変わりございませんか?」と気持ちを向けると、「お陰様で」と返されそうです。ただただ、いつまでも、このまま変わらぬ姿でここに居てほしいと思う、数少ない作品です。ここまで恵まれた環境で熟成された工芸品は、金銭的価値のある骨董品とか、高い技術による工芸品、優れた芸術作品、貴重な歴史資料などという人間の欲の匂いをまといません。ひたすら無言で、まるで空気になりきったように空間を占めています。 (2012年4月20日)


(ファザネリー城 (ドイツ))



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